不登校で仕事に行けない…親は退職すべき?両立や休業制度の活用法を徹底解説

子どもが不登校になると、親は朝の付き添いや学校からの呼び出しで「仕事に行けない」状況に直面します。突然の欠勤や早退が続くと、職場に迷惑をかけてしまうのではと不安になり、「退職や離職しかないのか」と悩む方も少なくありません。

しかし実際には、休業制度の活用や働き方の調整、家族や外部の支援を組み合わせることで、仕事と家庭の両立は可能です。本記事では、親が退職を決断する前に知っておくべき制度や工夫を整理し、安心して次の一歩を踏み出せるように解説します。

目次

「不登校で仕事に行けない」状況でも“両立”できる方法

子どもが不登校になると、親は朝の付き添いや学校からの急な呼び出しで仕事に行けなくなることが少なくありません。「もう退職しかないのでは?」と悩む方も多いですが、実際には退職や離職に至る前にできる工夫や支援策があります。ここでは、仕事と家庭を両立するための具体的な道筋を整理して解説します。

いま起きていることの整理(朝の付き添い・呼び出し・面談などで勤務が不安定になる)

不登校の子どもを抱える家庭では、朝に学校へ行けず親が付き添うことになったり、学校からの呼び出しで突然仕事を抜けなければならないケースが頻発します。面談や医療機関の受診なども加わり、勤務が安定しにくくなります。まずは「なぜ仕事に行けないのか」「どの時間帯が不安定なのか」を具体的に書き出して、現状を整理しましょう。問題を可視化することで、職場への説明や家族内での役割分担を考える土台ができます。

今日からできる一次対応(上司への共有テンプレ/欠勤・早退の連絡動線づくり)

状況を抱え込むのではなく、職場に誠実に伝えることが大切です。「子どもが体調不安定で登校が難しく、朝の時間帯に勤務に影響が出る可能性があります」と簡潔に共有するだけでも理解が得やすくなります。

また、急な欠勤や早退の際に、電話以外にもチャットやメールで迅速に連絡できるルートを職場と取り決めておくと安心です。伝え方のテンプレをあらかじめ準備しておくと、焦らずスムーズに対応できます。

家庭内の役割分担と見守り体制(祖父母・配偶者・きょうだいの協力設計)

両親のどちらかに負担が集中すると、心身の疲労が一気に高まります。配偶者と話し合い、朝はどちらが対応するか、日中の付き添いをどう分担するかを具体的に決めましょう。祖父母に短時間見守ってもらう、きょうだいに簡単なサポートをお願いするなど、小さな協力の積み重ねが親の仕事継続を支えます。家族全体で「不登校は家庭全体で支える問題」という意識を共有することが重要です。

外部の「居場所」を確保して親の就労を支える(フリースクール・適応指導教室・オンラインの活用)

子どもが家庭に閉じこもると、親の付き添いが長時間必要になり、仕事に行けない状況が続きます。地域のフリースクールや教育委員会の適応指導教室を活用すれば、子どもに安心できる居場所ができます。オンライン学習や居場所サービスを利用するのも選択肢の一つです。家庭外に子どもが安心できる場所を持つことは、親が働く時間を確保するためにも欠かせません。

在宅勤務・時短・フレックス・シフト調整の具体例(お願いの順序と伝え方)

コロナ禍以降、在宅勤務やフレックス制度を導入している企業は増えています。まずは上司に「一時的に勤務時間をずらせないか」「週の一部を在宅にできないか」など相談してみましょう。シフト勤務の場合は、朝に付き添いが必要な日は午後から働く、繁忙期には逆に協力するなど、職場にメリットを示しながら交渉すると受け入れられやすいです。伝える際は「子どもが不安定で突発的に休む可能性があるため、柔軟に働き方を調整させていただきたい」と誠実に伝えることがポイントです。

“休業制度”を正しく使ってキャリアと生活を守る

子どもが不登校になり、親が仕事に行けない状況は珍しくありません。すぐに退職や離職を選ぶ前に、まずは会社の「休業制度」や法律で認められている仕組みを活用することが大切です。適切に制度を使えば、仕事を続けながら家庭を支える時間を確保できます。ここでは、知っておくべき休業制度とその使い方を具体的に紹介します。

育児・介護以外でも活用できる会社内の特別休暇・欠勤扱い

多くの会社には就業規則で「特別休暇」や「欠勤扱い」といった制度が用意されています。これは子どもの行事や病気など、家庭の事情に対応できる仕組みです。育児や介護専用でなくても、不登校による急な対応に利用できる場合があります。まずは就業規則を確認し、「私用休暇」や「特別有給休暇」といった項目を探してみましょう。

労基法・労使協定まわりの基本(有給・時間単位年休・遅刻早退の扱い)

労働基準法では、労働者は年次有給休暇を取得する権利があります。最近は「時間単位」で有給を取れる企業も増えており、朝だけ付き添い、午後から出社するといった使い方が可能です。また、遅刻や早退も「半休」「時間有給」でカバーできるケースがあるため、会社の人事部や上司に確認しておくと安心です。

私傷病休職・メンタル不調時の産業医相談の流れ

不登校の子どもを支える中で、親自身が心身ともに疲弊することは少なくありません。その場合、「私傷病休職」として休業する選択肢もあります。一定期間、無給もしくは給与の一部が補償される形で休めることが多く、医師の診断書が必要です。また、企業に産業医がいる場合は相談し、休職や復帰の流れを支援してもらうのが安心です。

学校関連行事・通院等で使える「時間単位」の休暇申請テンプレ

学校の面談や通院で「午前2時間だけ抜けたい」といったニーズも多いはずです。こうしたときは「時間単位の休暇」が便利です。

申請の例文としては、
「○月○日、子どもの学校面談のため午前10時から2時間休暇を希望します。午後からは通常勤務いたします」
と具体的に伝えると、職場も理解しやすくなります。

フリーランス・自営業のセーフティネット(傷病手当金に該当しない時の代替策)

自営業やフリーランスの場合、会社の休業制度は使えません。ただし、自治体や国の制度で支援を受けられるケースがあります。例えば、自治体の「子育て支援短期事業(ショートステイ・トワイライトステイ)」や、民間のフリースクールの利用補助などです。こうした外部制度を併用し、仕事を休まなくても子どもを安心して預けられる環境を整えることが大切です。

“離職”を検討する前に選択肢と影響を見える化

子どもが不登校になり、親が仕事に行けない状況が続くと「いっそ離職した方がいいのでは」と考える方も多いでしょう。ですが、離職は生活や将来に大きな影響を及ぼします。決断する前に、他の選択肢や影響をしっかりと整理することが大切です。ここでは、離職前に確認しておきたいポイントを解説します。

離職による収入・社会保険・再就職への影響チェックリスト

離職をすると、当然ながら収入が途絶えます。それに加え、社会保険の切り替えや年金の手続きも必要になります。また、再就職の際に「離職理由」が採用に影響する可能性もあります。

チェックリストの例
  • 毎月の生活費をどのくらい確保する必要があるか
  • 健康保険・年金は誰の扶養に入るのか
  • 再就職活動にどのくらいの期間を要するか

これらを整理することで、離職のリスクを客観的に見極められます。

配置転換・部署異動・労働時間変更という中間解

離職を選ぶ前に「配置転換」や「部署異動」「労働時間の変更」を相談する方法があります。例えば、出張や残業の少ない部署に異動する、勤務日数を減らすなどです。

社内への相談例

「現在、子どもの不登校対応で勤務時間に制約があり、現部署での勤務継続が難しくなっています。異動や時間調整の可能性についてご相談させていただけませんか」

このように誠実に打診することで、会社側も協力しやすくなります。

学校・自治体・NPOの相談先をつないで支援網を作る(スクールカウンセラー/教育相談/NPO)

不登校は家庭だけで抱え込むものではありません。学校のスクールカウンセラーや教育相談センター、地域のNPOなどは親子の支援を行っています。親の就労継続について相談できる窓口もあり、子どもの居場所づくりや学習サポートをしてくれる団体もあります。支援網を広げることで、離職しなくても解決できる可能性が高まります。

子の見守り時間帯と働き方のマッチング

不登校の子どもは、午前中に不安定で午後は落ち着くなど、時間帯によって状況が異なることがあります。そのため、子どもが安定している時間帯に仕事を入れる工夫が有効です。

  • 午前は在宅勤務にして午後から出社する
  • 午前中は親が在宅、午後は祖父母が見守りを担当

子どものリズムに合わせて働き方を調整することで、離職せずに済むケースも多いのです。

離職以外の方法

どうしても一時的に勤務継続が難しい場合は、離職ではなく「短期の休業」を選ぶ方法もあります。また、正社員から契約社員に変更して負担を軽くする、副業や在宅ワークを組み合わせるなどの選択肢もあります。完全に職を手放さず「働き方を変える」ことで、収入を維持しつつ子どもを支えられるケースは少なくありません。

“退職”を選ぶ場合の判断基準と進め方

不登校の子どもを支える中で、どうしても仕事の両立が難しいと感じ、退職を考える親も少なくありません。退職は大きな決断ですが、家庭や子どもの状況によっては適切な選択になることもあります。ここでは、退職を選ぶ際の判断基準や手続きの流れ、家計・生活の再設計のポイントを解説します。

臨床的リスク・家庭状況・経済状況の三点評価(安全・生活・将来)

退職を考えるときは、感情だけでなく「安全」「生活」「将来」の3点から総合的に判断しましょう。

  • 安全:子どもが自傷や強い不安を抱え、親の常時付き添いが必要か
  • 生活:現在の収入で生活費・住宅費・教育費をまかなえるか
  • 将来:退職後に再就職や在宅での収入を得られる見込みはあるか

この3つを家族で話し合い、退職の必要性を冷静に評価することが重要です。

退職の前後で必要な手続き(国民年金・国保・失業給付・扶養の切替)

退職後は、社会保険や年金の切り替えが必要になります。会社の健康保険を外れる場合は国民健康保険へ、厚生年金は国民年金へ切り替えます。配偶者の扶養に入る場合は、収入制限を確認しておきましょう。また、雇用保険に加入していた場合は失業給付を受けられる可能性があります。手続きはハローワークで行うため、退職前に流れを把握しておくと安心です。

再就職までの学び直しと在宅収入源づくり

退職後の生活を安定させるには、収入の新しい柱を考える必要があります。最近は在宅でできる仕事(データ入力、ライティング、オンライン講師など)も増えており、短時間勤務でも収入を得られる仕組みを整えておくと安心です。また、資格取得やスキルアップを通して再就職に備えるのも有効です。子どもの状況が落ち着いたときに再び働けるよう、今から準備しておくと将来の不安を減らせます。

夫婦での家計・役割再設計ワーク

退職後の収入減少に備えて、家計を見直すことが欠かせません。携帯電話やサブスク、保険などの固定費を削減するだけでも負担は大きく軽減されます。また、児童扶養手当や就学援助などの制度も活用し、経済的支援を受けながら生活を維持しましょう。夫婦で役割を再設計し、家計管理を分担することが家庭全体の安定につながります。

退職を子どもにどう伝えるか

退職を決めたとき、子どもへの伝え方も大切です。「あなたのせいで仕事を辞めた」と受け止められると、子どもに大きな罪悪感を与えてしまいます。伝えるときは「もっと一緒にいる時間を増やしたいから」「家のことを大切にしたいから」という前向きな理由にしましょう。安心感を持たせることが、子どもの心の安定にもつながります。

まとめ

不登校によって仕事に行けない状況は、多くの親が抱える現実です。しかし「退職」や「離職」だけが答えではありません。まずは休業制度や勤務調整を活用し、家族や学校、地域の支援を組み合わせて両立の道を探ることが重要です。それでも難しい場合に限り、退職を選び、生活の再設計と新しい働き方を模索していくのが望ましい流れです。親が安心して働き方を選択できることは、子どもの心の安定にもつながります。本記事を参考に、ご家庭に合った最適な方法を見つけてください。

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