子どもが不登校になると「私の育て方が悪かったのでは…」と自分を責めてしまう親御さんは少なくありません。特に母親は周囲からの偏見やプレッシャーを受けやすく、「親のせい」と思い込んで心身ともに疲弊してしまうこともあります。
しかし、文部科学省の調査でも不登校は学業・人間関係・体調など複数の要因が絡み合って生じることが明らかになっており、特定の親のせいと断定できるものではありません。
本記事では「親のせい」とされやすい背景や誤解を整理し、親の関わりが与える影響、そして今日から実践できる支え方について解説します。
不登校の「原因」は一つじゃない
「不登校は親のせい」と思い込みがちですが、実際には原因は一つではありません。文部科学省の調査によれば、不登校の背景には学業や友人関係、健康状態、家庭の状況など複数の要因が複雑に絡み合っています。ここではデータや事例から見える“不登校の実態”を整理します。
小中の不登校は増加、背景は“複合要因”が前提(学習・人間関係・健康・環境)
文科省の統計では、小中学生の不登校は年々増加傾向にあり、その多くは「これといった単一の理由がない」ケースです。友達との関係、勉強のつまずき、体調不良などが少しずつ積み重なり、「学校に行けない」という状態につながっています。
要因分析の公的調査から見えること
調査では「友人関係が原因」「学業が原因」といった項目で回答されることもありますが、多くの場合は複数回答です。つまり、不登校は一つの原因で起こるのではなく、生活全体のバランスが崩れて発生するものと理解する必要があります。
体調面の並存:起立性調節障害など“朝つらい”を伴うケースの理解
小中学生に多く見られる「起立性調節障害(OD)」は、朝に立ちくらみや強いだるさが出る症状です。不登校の背景にこの病気が隠れている場合もあります。栄養や睡眠リズムの乱れが症状を悪化させ、結果的に「学校に行けない」と誤解されるケースもあるため、体調面の確認は欠かせません。
「母親」が責められがちな背景
不登校の原因を「母親のせい」とする見方はいまだ根強く存在します。しかし、それは科学的根拠よりも社会的な思い込みや偏見に基づいていることが多いのです。ここでは、なぜ母親が責められやすいのか、その背景を整理します。
経験談や社会的偏見
不登校の相談現場では、「母親の過干渉」「甘やかしすぎ」が原因といった言葉をかけられるケースがあります。こうした言説は、家庭教育の責任をすべて母親に押しつける社会的構造に由来しており、実際には根拠が乏しいものです。結果として母親自身が強い罪悪感を抱き、親子関係がさらに緊張してしまうこともあります。
不登校はどの家庭にも起こり得る現象
文科省の統計や臨床現場の報告では、不登校は特定の親の性格や育て方で説明できるものではないとされています。むしろ、家庭環境に問題がなくても、子ども自身の体調や学校での人間関係、学習上の課題などから不登校は生じます。つまり「母親のせい」という単純な結論は科学的にも成立しません。
学校文化・制度側の条件
学校制度にも要因があります。出席扱いの柔軟な制度が十分に周知されていなかったり、教室以外で学ぶ場が十分に活用されなかったりすると、子どもが学校から離れやすくなります。これは家庭の問題ではなく、制度や環境の側の課題です。親を責めるよりも、学校や社会の仕組み全体を見直すことが重要です。
親の関わり方が子どもに与える影響
不登校の子どもにとって、親の関わり方は大きな影響を与えます。とはいえ、それは「親のせいで不登校になる」という意味ではなく、「親がどう支えるかによって回復のスピードや安心感が変わる」ということです。ここでは、実践できる具体的な対応を紹介します。
詰問より安心の確保
「なぜ行けないの?」と問い詰めるのではなく、子どもが安心して過ごせる家庭環境をつくることが大切です。生活リズムを整えるために、まずは起床・就寝・食事の時間をゆるやかに整えていくことから始めましょう。家庭が「安全基地」となることで、子どもは少しずつ外の世界に関わる準備が整っていきます。
学校との情報共有
学校との連絡では、親の感情をぶつけるのではなく、事実と希望を簡潔に伝えることが効果的です。「朝の体調不良が続き、登校が難しい」「家庭では生活リズムの改善を試みている」「可能であれば別室登校を検討したい」など、情報を整理して伝えることで、学校も適切な支援をしやすくなります。
別室・時間差登校や外部サービスの活用
いきなりフルタイムで登校するのは難しい場合も多いため、別室登校や遅れての登校、フリースクール・オンライン学習の活用など「中間解」を検討しましょう。これらは「出席扱い」として認められるケースもあり、学校とのつながりを保ちながら無理なく学びを続けられます。
体調不良の訴えが続くときの医療動線
「朝がつらい」「立ちくらみがある」といった体調不良の訴えが続く場合、まずは小児科で相談しましょう。必要に応じて起立性調節障害(OD)や心療内科など専門外来を紹介されることもあります。体調に原因がある場合は、早めの診断と対応が子どもの安心につながります。
まとめ-不登校は親のせいではない
不登校は「親のせい」だけで説明できるものではなく、学習・人間関係・体調など多くの要因が絡み合う複雑な現象です。母親や父親を一方的に責めることは、かえって家庭を追い詰め、子どもの安心感を奪う結果につながりかねません。
大切なのは「親のせいではない」と知ったうえで、家庭が安心できる場になることです。生活リズムを整え、子どもの気持ちを受け止め、学校や専門機関と連携しながら、少しずつ日常を取り戻していきましょう。親が孤立せず、支援を受けながら歩むことが、不登校からの回復を支える大切な力となります。
