突然の子どもの不登校。仕事はフルタイム、辞めるべき?休職できる?共働き家庭ではどうすれば?
そんな悩みを抱える保護者のために、この記事では不登校とフルタイム勤務の両立に関するあらゆる情報を解説します。休職や復職に使える制度の活用法、共働きでの役割分担、フリースクールの併用など、仕事を続けながら子どもと向き合うための実践的な方法を詳しくご紹介します。
不登校とフルタイム勤務、どう向き合えばよい?
子どもが不登校になったとき、フルタイム勤務を続けることに不安を抱く保護者は少なくありません。ここでは、日々の負担を見直す方法や、仕事と家庭のバランスを保つために検討すべき選択肢を具体的に紹介します。
① 日々の負担を整理して、優先順位を見直す
不登校の子どもがいる家庭では、毎日の予定が想定外の事態で崩れがちです。朝の対応、突発的なメンタルの揺らぎ、学校との連絡、家庭内での気遣いなど、目には見えない負担が積み重なります。まずは家庭と仕事の両面で「やるべきこと」と「やらなくてもよいこと」を可視化し、タスクの優先順位を整理することが大切です。
全てを完璧にこなそうとせず、日々の負荷を減らす工夫が、心の余裕を生み出します。フルタイム勤務にこだわりすぎず、週単位や月単位でのスケジュールを柔軟に調整しながら、現実的に実行できるラインを見極めていきましょう。
② 無理に続けるだけが選択肢ではない…休職も可能性のひとつ
仕事と家庭の両立が限界に近づいていると感じるとき、「仕事を辞めるかどうか」で思考が止まってしまうことがあります。しかし、その前に「一時的な休職」という選択肢を検討することも重要です。
育児や介護と同じように、子どもの不登校も親の休職理由として認められるケースが増えています。家庭が落ち着くまでの一定期間だけでも職場を離れることで、心身のリセットが可能になり、その後の復帰にも前向きなエネルギーが戻ってくる場合があります。将来的なキャリアをあきらめる必要はありません。一時の中断が、むしろその後の安定を築く土台となることもあるのです。
③ 制度を最大限活用して、両立の基盤を整える
フルタイム勤務を継続しながら不登校の子どもを支えるには、制度の活用がカギとなります。会社によっては「看護休暇」や「短時間勤務制度」「フレックス制度」などが整備されており、これらを組み合わせて柔軟な働き方を設計することができます。特に在宅勤務や時差出勤は、不登校の子どもの状況に合わせやすく、急な対応にも柔軟に動けるメリットがあります。
また、公的機関が提供する家族支援やカウンセリング制度を積極的に利用することで、親だけで抱え込まずに済む環境を整えることができます。こうした制度を知っているかどうかで、働き方と家庭の安定度は大きく変わります。
④ 周囲に相談し、孤立しないための支えをつくる
不登校と向き合う親の多くが、周囲に理解されず孤独を感じています。しかし、職場や家庭、地域など、信頼できる人とのつながりを持つことで、その負担は確実に軽くなります。直属の上司や同僚に正直な状況を伝えることで、業務の分担や理解が得られることも少なくありません。
また、同じ境遇の保護者と交流できる場や、フリースクールや居場所支援団体との連携を通じて、子どもにも新たなつながりが生まれることがあります。家庭の中だけで問題を抱えるのではなく、社会の資源を使って“孤立しない働き方”を築くことが、長期的な両立への第一歩になります。
休職せずに復帰するには?利用可能な制度を徹底活用
休職や退職を選ばずに今の仕事を続けたいと考える親御さんに向けて、活用できる支援制度や職場での工夫を解説します。制度を知っておくだけで、不安が大きく軽減されるケースも多くあります。
① 介護休暇や育児関連制度の中に「不登校対応」の糸口
不登校に対応するための制度は明確に用意されていない場合が多いですが、既存の育児休業・介護休暇の制度を応用することで、一定の柔軟性を確保することが可能です。たとえば、子どもが12歳未満であれば「子の看護休暇」が活用でき、心身の不調や精神的ケアが必要な不登校の状況も、医師の診断書を添えることで対象となるケースがあります。
また、就業規則に記載がなくても、企業の裁量で休暇取得を認めてもらえる場合もあるため、制度の枠にとらわれすぎず、上司や人事と相談して調整する姿勢も重要です。現場での前例が少ないからこそ、自ら情報を集めて可能性を模索することが、復帰への大きな一歩となります。
② フレックス・時短・在宅勤務をどう組み合わせるか
フルタイム勤務を続けながら不登校の子どもを支えるには、時間の使い方に柔軟性を持たせることが不可欠です。企業によっては「フレックスタイム制」「時短勤務」「在宅ワーク」などの選択肢が用意されています。これらを単体で使うのではなく、家庭のリズムや子どもの状況に応じて組み合わせることで、負担を最小限に抑えられます。
たとえば、朝の不安が強い子どもには午前在宅、午後出勤というスタイルも検討できますし、週に数日はフルリモートに切り替えることで通勤時間を削減し、子どもとの関わりを確保することも可能です。勤務時間を一度見直し、自分にとって最も実現可能なバランスを探ることが鍵となります。
③ 職場の理解を促すための実例と伝え方の工夫
制度の利用には、職場の理解と協力が欠かせません。しかし、「不登校」というテーマはまだ職場での認知度が低く、誤解を招くこともあります。そのため、伝え方には工夫が必要です。たとえば、「子どもの心身の健康のため」「医師の判断で自宅療養中」など、専門的・客観的な言葉を使って説明すると、納得を得やすくなります。
また、同じような状況で制度を活用している実例があれば、それを引用して相談することで説得力が増します。社内で前例がない場合でも、外部の情報やガイドラインを示すことで、「特別扱い」ではなく「必要な配慮」として受け止められる土壌を作ることが大切です。理解を得られれば、長期的に安定した働き方と家庭の両立が可能になります。
共働き世帯で仕事・家庭・不登校を両立する方法
共働き家庭では、家族全体の協力が重要です。この章では、家庭内での役割分担、外部の支援機関の活用、働き方の見直しなど、実際に使える両立の工夫を紹介します。
① 家族と役割を分担し、負担の偏りを防ぐ
共働き家庭で不登校の子どもを支えるには、夫婦や家族全体での役割分担が重要です。一方の親だけが対応を担ってしまうと、精神的・身体的に疲弊しやすくなります。朝の対応や学校との連絡、習い事の送迎、見守りなど、やるべきことを「見える化」し、分担を明確にすることが、ストレスを軽減する第一歩です。家族会議などを活用して、定期的に役割や負担のバランスを見直す仕組みをつくると、持続可能なサポート体制につながります。
② 祖父母や親戚の協力を得るための工夫
近くに住む祖父母や信頼できる親戚がいれば、日中の見守りや話し相手として協力をお願いするのも有効です。ただし、いきなり全面的に頼るのではなく、相手の生活リズムや体力も配慮しつつ、「週1回だけ」「午前中だけ」など無理のない範囲での協力を求めるのが現実的です。関わり方にルールを設けることで、子どもも大人も安心して過ごせます。
③ フリースクール・適応指導教室の併用で安心の居場所づくり
子どもが日中を自宅だけで過ごすと孤立感が強まりがちですが、フリースクールや適応指導教室といった第三の居場所を活用することで、社会とのつながりが生まれます。これらの施設では、個別対応や少人数制、自由なカリキュラムなど、子どものペースに合わせた学びが可能です。自治体によっては通所に補助金が出るケースもあるため、利用前に調べておくとよいでしょう。
④ テレワークや時短勤務制度を最大限に活かす
現在の職場にテレワークや時短勤務制度がある場合、それを活用して家庭との両立を図ることができます。勤務時間をずらして朝の時間を子どもと過ごしたり、在宅勤務に切り替えて子どもの様子を見守りながら働くことも可能です。制度が使いづらい雰囲気がある場合は、人事部門や上司に事前相談し、具体的な提案を準備しておくとスムーズです。
⑤ 自営業・副業・フリーランスへの転換を視野に入れる
企業勤めの働き方がどうしても合わない場合、自営業やフリーランスという形での独立を検討する家庭も増えています。自宅でできるライティング、デザイン、オンライン講師、EC販売など、家庭と両立しやすい仕事は多様化しています。ただし収入が不安定になるリスクもあるため、事前の資金準備やスキルの棚卸し、マーケット調査は不可欠です。副業からスタートして徐々に軌道に乗せる方法も有効です。
⑥ 夫婦間の情報共有と精神的サポート体制の構築
実務的な分担だけでなく、精神面での支え合いも両立のカギです。共働きで不登校の子どもを支えることは、とても大きなプレッシャーがかかります。どちらか一方だけが悩みを抱え込むのではなく、日々の状況を共有したり、互いの不安を言葉にする時間をつくることで、家庭の空気が安定しやすくなります。LINEや共有ノートなど、日常的に気軽に情報をやり取りできるツールの活用もおすすめです。
「辞める」という選択は最後の一歩として想定しておく
「仕事を辞めるべきか」と悩む方に向けて、辞める前に確認すべきポイントと準備すべきことをまとめました。経済面・再就職の可能性・精神的な負担など、多角的に考えることが大切です。
① 退職を決断する前にすべき準備と確認事項
「仕事を辞める」という決断は、生活や将来に大きく影響します。そのため、まずは現在の状況を客観的に整理し、本当に辞めるしかないのかを検討することが大切です。時短勤務や在宅勤務、職場への相談などで働き方を柔軟に変えることができないか、家族や信頼できる第三者と話し合いながら選択肢を探るべきです。焦って判断すると後悔につながる可能性もあるため、慎重な見極めが必要です。
② 保護者向け支援制度・行政サポートをフル活用
退職する前に、利用可能な支援制度を漏れなく確認しておきましょう。厚労省や自治体が提供する子育て支援、看護休暇、家庭支援員制度など、不登校の家庭に寄り添う制度は少なくありません。また、一部自治体では子どもだけでなく保護者の心理的負担に対するカウンセリング支援もあります。これらの制度を知っておくだけでも、精神的に大きな支えとなります。
③ 収入減への備えと再就職の準備を並行する
仕事を辞めると当然、収入は大きく下がります。まずは雇用保険の失業手当を受けられる条件を確認し、必要書類の手配を始めておきましょう。あわせて、在宅でできる仕事や副業、資格取得支援制度の活用など、将来的な再就職・転職の選択肢を視野に入れることも大切です。準備なく退職すると精神的にも経済的にも苦しくなるため、「辞めた後」の生活設計が肝になります。
④ 家計の見直しと生活コストの最適化
フルタイム勤務を辞めると生活費のやりくりに大きな変化が生じます。そのため、早い段階で家計の見直しを行うことが不可欠です。通信費や保険料、サブスクリプションの整理など、固定費の削減から始めましょう。教育費や生活費の優先順位をつけ、削れる部分をリストアップすることで、家計に対する安心感も生まれます。また、無料で使える家計簿アプリなども活用して可視化すると効果的です。
⑤ 社会とのつながりを失わない工夫も忘れずに
退職によって仕事仲間との関わりが減ると、孤立感を抱きやすくなります。そのため、地域の支援グループや親の会、不登校の子どもを持つ家庭同士の交流など、社会とのつながりを意識的に維持することが大切です。また、SNSで同じ境遇の親と情報交換をしたり、ブログや日記で自分の気持ちを整理したりすることも精神的な安定につながります。「自分だけじゃない」と感じられる環境を持つことが、退職後の不安軽減にもなります。
まとめ
不登校の子どもを抱えながらフルタイムで働き続けることは、精神的・体力的にも大きな負担となります。しかし、制度の活用や家族・地域との連携、柔軟な働き方への転換などを通じて、両立は不可能ではありません。辞めるという決断も一つの選択肢ですが、その前に取れる行動や備えるべきことを丁寧に整理しておくことが大切です。一人で抱え込まず、多角的な視点で対処していくことが、不登校の子どもにとっても親にとっても安心できる道をつくる第一歩になります。